仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)174号 判決 1950年4月12日
被告人
渡部淸八郞
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役六月及び罰金五千円に処する。
但し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する被告人が右罰金を完納することができないときは金五十円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
弁護人岡部秀温の控訴理由第一点について。
原判決挙示の各証拠によれば原判決判示第一、三事実及び被告人が同第二事実判示日時場所で同判示の氏名不詳者の依賴を受けて同人の窃取した粳精米一俵の内三斗位をその贓物であることの情を知りながら山之内修一に対し他にこれが賣却方を依賴し右修一において同日中に浅舞町の佐藤政吉方に持参し同人に対し代金二千四百円でこれを販賣した事実(以下第二事実と称する)を認められ更に右各証拠及び本件記録によれば右第二事実及び原判決判示第三事実の贓物の賣却周旋は原判決判示第一事実の贓物運搬を依賴された際に依賴されたものではなく、右第一事実判示山之内ムメノ方に運搬を了してから依賴されたものであり且つ右第二、三事実の贓物の賣却周旋は同時に依賴されたのではなく、別々に依賴されたものであることが認められる。
しからば原審が原判決判示第二において山之内修一に賣却方を周旋しと認定したのは山之内修一を介し他に賣却方を依賴した事実関係を誤認したものであり右は本件起訴状記載公訴事実の第二事実をそのまま認定したものであるが右起訴状記載の公訴事実を前段認定のように修正認定する程度のことは控訴審においてなし得べきものと解するのを相当とし結局右事実誤認は判決に影響を及ぼさないものといわなければならない。以上の理由により原審が原判決判示第一、二、三事実を併合罪として処断したのは結局相当であり論旨理由がない。
(弁護人岡部秀温提出控訴趣意書第一点)
原判決は其理由の摘示第一において贓物の運搬の事実第二、第三、において各牙保の事実を認定し之に対し刑法第四十五條前段の併合罪の関係にありとし同條及第十條を適用したるは法令の適用に誤りあるものなり。
贓物の運搬牙保の二所爲は之を一罪として処断すべきものなり贓物を運搬し之を牙保するの行爲は何れも同一の法益を侵害する手段に外ならざるは同一物の運搬牙保したる場合においては其二行爲は之を包括的に観察して一罪として処断すべきものなり。尚一罪なりや数罪なりやは被害者の員数又場所の同一なると否とにのみ依りて定むべきものにもあらず自轉車の牙保と米の牙保との二行爲は本件被告は同一意思発動に基く單一の犯罪なりと云はざるべからず。以上何れの点より見るも之に併合罪として刑法第四十五條及第四十七條第十條を適用したるは違法なり。
(註 本件は量刑不當にて破棄自判)